「使ったお金・実施したこと」から「地域・住民の変化」を問う決算審議へ
目次
- 7月・8月の活動 ― 全国各地で「決算審議」をテーマに研修
- 「やったこと」ではなく「何が変わったのか」を評価する
- 決算書だけではなく、事業・施策を単位に成果を見る
- 議員間討議で「何を、どう審議するのか」を決める
- 委員会別グループワーク ― 実際の決算審議を組み立てる
- 研修を、その後の「実際の決算審議」につなげる
1.7月・8月の活動 ― 全国各地で「決算審議」をテーマに研修
2026年7月・8月は、
鳥取県町村議会議長会、
愛知県町村議会議長会、
紀北ブロック議長会、
蒲生郡議長会、
いなべ市議会、
都城市議会、
行方市議会、
那珂川町議会
をはじめ、全国各地の議会で研修・支援の機会をいただきました。
この時期、特に多く取り上げたテーマが「決算審議」です。
9月定例会を中心に、多くの地方議会で決算審議が行われます。
しかし、決算書を開き、
「この支出はいくらだったのか」
「なぜ不用額が出たのか」
「何人が参加したのか」
「何件実施したのか」
と確認するだけでは、決算審議の本来の役割を十分に果たしたとは言えません。
もちろん、適正に予算が執行されたのかを確認することは重要です。
しかし、その先にもう一つ重要な問いがあります。
「そのお金を使った結果、地域や住民にどのような変化が生まれたのか」
そして、
「その結果を踏まえて、事業をどう改善し、次の予算や政策につなげていくのか」
まで議論してこそ、決算審議が未来のまちづくりにつながります。
今回の研修では、こうした考え方を講義でお伝えするだけではなく、
実際の決算審議につなげることを重視し、委員会別のグループワークも多く取り入れました。
総務、福祉、産業建設、文教など、それぞれの委員会が所管する実際の事業・施策を念頭に置きながら、
「どの事業を重点的に審議するのか」
「その事業の本当の成果とは何か」
「成果を判断するためには何を確認すべきか」
「実際の決算審議で、どのような質疑をするのか」
まで議員同士で議論していただきました。
研修を研修だけで終わらせず、その後に控える実際の決算審議にどうつなげるか。
ここを強く意識した実践的な内容としました。
2.「やったこと」ではなく「何が変わったのか」を評価する
成果とは、行政が「やったこと」ではない
決算審議で最も重要なのは、成果を起点に評価することです。
行政の成果説明では、
- ○○事業を実施した
- 講座を○回開催した
- ○人が参加した
- ○件を支援した
といった説明が多く見られます。
もちろん、これらも事業を把握するためには必要です。
しかし、これらは基本的には「行政が何をしたのか」を示すものであって、それだけで成果とは言えません。
本当に確認しなければならないのは、その先です。
事業を実施した結果、住民はどう変わったのか。
地域はどう変わったのか。
当初解決しようとしていた課題は、どこまで改善したのか。
「何をやったか」から「何が変わったか」へ
例えば、移住促進事業であれば、「相談会を何回開催したか」「何人が相談したか」だけではなく、実際の移住や定住にどこまでつながったのか。
子育て支援であれば、「事業を実施したか」だけではなく、子育て世帯が安心して暮らせる環境に近づいたのか。
産業振興であれば、「補助金を何件交付したか」だけではなく、事業者の経営や雇用、地域経済にどのような変化が生まれたのか。
つまり、
「何をやったか」ではなく、「その結果、何が変わったのか」。
ここまで見て初めて「成果」を評価することができます。
決算審議の視点を、事業の実施確認から、地域・住民の変化の検証へ転換することが、今回の研修の大きなテーマでした。

3.決算書だけではなく、事業・施策を単位に成果を見る
決算書だけでは「成果」は見えにくい
もう一つ重要なのが、何を単位として決算を審議するのかです。
決算書は極めて重要な資料ですが、決算書だけを起点に審議すると、どうしても「いくら使ったのか」「予算どおり執行したのか」という個々の支出の確認が中心になりやすくなります。
そこで必要になるのが、事業や施策を一つのまとまりとして捉え、その目的と成果を見ることです。
一つの事業についても、
何のためにこの事業を行ったのか。
↓
どのような地域課題を解決しようとしたのか。
↓
そのために何を実施したのか。
↓
その結果、住民や地域にどのような変化が生まれたのか。
↓
その変化は、総合計画で目指している地域の姿に近づくものだったのか。
という流れで見ていきます。
「いくら使ったか」から「目指す地域に近づいたか」までを見る
つまり、決算審議で確認したいのは、
「いくら使ったか」
→「何をしたか」
→「何が変わったか」
→「目指す地域に近づいたか」
というつながりです。
そのためには、決算書だけでは十分ではありません。
主要施策の成果説明書、事務事業評価、施策評価、総合計画の進捗資料などを組み合わせ、
「予算を使った結果、どのような成果につながったのか」が追える決算資料にしていく必要があります。
また、議会が成果を検証しようとしても、成果説明書に「実施回数」「参加人数」「交付件数」しか記載されていなければ、本当に成果が出たのかを判断することはできません。
だからこそ、議会側も、
「付属説明書や成果説明書については、住民や地域の変化を分かりやすく漏れなく、成果として示してほしい」
と具体的に求めていくことが重要です。
決算審議を変えることと、付属説明書・成果説明書を変えることは、切り離せない関係にあります。
4.議員間討議で「何を、どう審議するのか」を決める
すべての事業を同じ深さで審議することはできない
今回の研修で特に重視したのが、決算審議における議員間討議です。
決算書や成果説明書には、膨大な数の事業が掲載されています。
限られた審議時間の中で、そのすべてを同じ深さで審議することは現実的ではありません。
だからこそ、いきなり執行部への質疑に入るのではなく、まず議員間で、
「今年度の決算では、どの事業・施策を重点的に審議すべきか」
を議論することが重要です。
「本当の成果」を議員間で考える
そして、選んだ事業について、
① この事業は、そもそも何を変えるための事業なのか。
② この事業における本当の「成果」とは何なのか。
③ 成果が出たと判断するために、何を確認する必要があるのか。
④ そのために、執行部へどのような質疑を行うのか。
までを議員間で整理します。
5.委員会別グループワーク ― 実際の決算審議を組み立てる
委員会ごとの実際の事業を念頭に議論
今回の研修では、この部分を委員会別のグループワークとして実際に行いました。
それぞれの委員会で所管する分野や事業は異なります。
福祉を所管する委員会であれば、子育て、高齢者福祉、健康など。
産業建設を所管する委員会であれば、農業、商工、観光、道路など。
総務を所管する委員会であれば、財政、公共施設、地域づくりなど。
それぞれの委員会が実際に向き合う事業を念頭に、どの事業を重点的に取り上げるべきかを選び、その事業の目的、本当の成果、確認すべき点を議員同士で議論し、最後は実際の質疑まで組み立てる。
単に「議員間討議が重要です」と説明するのではなく、実際に議員間討議を行いながら、決算審議そのものを組み立てていく研修としました。
「参加者1,000人」は、本当に成果なのか
例えば、成果説明書に「イベント参加者1,000人」と記載されていた場合、
「昨年度より何人増えましたか」
とすぐに質疑を考えるのではありません。
その前に議員間で、
「そもそも、この事業の成果は参加者数が増えることなのか」
を議論します。
交流人口の増加なのか。
地域内消費の増加なのか。
地域への再訪なのか。
将来的な移住・定住につなげることなのか。
本当の成果を考えることで、初めて確認すべきことが見えてきます。
その結果、
「市外からの参加者はどれだけいたのか」
「地域内での消費につながったのか」
「リピーターは増えているのか」
「この事業によって地域にどのような変化が生まれたと評価しているのか」
と、質疑そのものが変わってきます。
議員間討議で「審議の設計」を行う
議員間討議は、質疑の後に感想を言い合うためだけのものではありません。
どの事業を審議するのか。
本当の成果は何なのか。
何を確認するのか。
どんな質疑をするのか。
こうした「審議の設計」を議員間で行うことが重要です。
6.研修を、その後の「実際の決算審議」につなげる
「研修を受けて終わり」にしない
今回、各地での研修を行う中で特に意識したのは、研修を受けて終わりにしないことです。
決算審議の考え方を学ぶだけであれば、講義だけでもできます。
しかし本当に重要なのは、その考え方をそれぞれの議会・委員会に持ち帰り、実際の決算審議が変化することです。
そのため、
成果をどう捉えるかを学ぶ
↓
委員会別に重点的に審議する事業を考える
↓
議員間討議で「本当の成果」を考える
↓
成果を判断するために必要な情報を整理する
↓
実際の質疑を組み立てる
↓
決算審議で検証する
↓
改善や次年度の予算・政策につなげる
という流れを意識して研修を組み立てました。
決算審議を「未来の政策・予算」につなげる
決算は、すでに終わった年度を扱います。
しかし、決算審議の目的は、過去を確認することだけではありません。
成果が出たのか。
なぜ出たのか、なぜ出なかったのか。
続けるのか、改善するのか、見直すのか。
そして、その判断を次年度以降の予算・政策にどう反映するのか。
そこまでつなげることが重要です。
「使ったお金」を見る決算から、「生まれた変化」を見る決算へ。
個々の議員がそれぞれ質問する審議から、議員間討議によって重点事業と論点を絞り込み、深める審議へ。
研修で学んで終わるのではなく、そのまま実際の委員会・決算審議につながる研修へ。
今後も、それぞれの議会の実情や委員会の運営に入り込みながら、決算・予算審議、議員間討議、委員会運営、政策形成を一体的に捉え、議会での議論が実際の地域・住民の変化につながるための実践的な支援を続けてまいります。

